20年くらい前に、お坊さんに尋ねてみたことがあります。
子どもに「理想的な教育」をしたら「理想的な人間」に育つものでしょうかと。
「そうですよ」とお坊さんは言いました。
その時私は、そうでもないんじゃないかなあと、思っていました。
でも今はあの答えは正しかったと思います。
「理想的な人間」とは「ありのままにいられる人間」だと思うようになったからです。
「どこへ出しても恥ずかしくない人間」とか「人に迷惑をかけない人間」とかじゃなく「自己受容ができている人間」
私は精神科の職員ですので、日々多種多様な「心の病」とであいます。
症状は、人それぞれですけれど「自己否定」「自己不信」「心(感情)の抑圧」が病巣にあることは共通しているように感じます。
子どもは自分の感情や願い、どんなことが好きでどんなことが嫌かといった「心」を尊重されてこないと、自分らしさを封印してしまいます。
こんなことを思ったらいけない、こんなものが好きなのは恥ずかしい、こんなことがしたいなんてとても言えない、などと思い込んでしまわないように、気を付けてあげてほしいのです。
子どもが自分のありのままを受け入れられなくなる要因として、親の方に恐れや不安があるようです。子どもの心云々よりも「世間体(人からどうみられるか全般)」が大事といったことです。
子どもは察して親の喜ぶキャラクターを演じ切ったりするので、思いや願いを抑圧しているふうにはみえないかもしれませんが、気をつけてあげてほしいのです。
これが好きよねと押しつけになっていないか、そんなのだめだめと、あしらっていないか。
大きくなってなにか問題が出てきてから「あなたのままでいい」とか「自信を持って」とか言われても、自己不信は根強く蔓延っていてそう簡単にとれるわけもありません。
「子どもの気持ち」はその子の本体です。どうか大事にしてやってほしいと切に思います。